損害保険のルーツ

ロイズに行ってきました

私は5月のGWにイギリス・ロンドンに行ってきました。
保険業界で仕事に携わって40年、保険のルーツとも言えるロンドンのロイズ、そのビルの中に初めて入ることが出来ました。
今回はロイズについてお話させていただこうと思います。

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再保険制度について

藤田組は保険代理店です。
当社でご契約いただいた保険は「保険会社」でお引き受けし保険証券を発行します。万一の事故の時は、お引き受けした保険会社から保険金が支払われます。
しかし大きな事故(例えば、巨大タンカーや石油コンビナートの事故等)で保険金が支払われるような場合、その保険会社が1社で大口の保険金を支払うことは、その会社の経営に影響が出てしまう可能性もあります。
そのため保険会社はお引き受けした保険契約の経営への影響を判断したうえで、引き受けた保険契約の責任の一部または全部を他の保険会社に引き受けてもらう制度を作っています。 この制度が「再保険」です。

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最後の再保険会社、ロイズ

保険会社が引き受けた保険契約を再度引き受ける保険会社を「再保険会社」と言いますが、再保険会社はまた別の再保険会社に再保険をすることがあります。そうやって大きな事故の場合に備えて各保険会社はリスクの分散を図っていますが、再保険を続けていくと、最後には再保険を引き受けてくれる会社が無くなってしまいます。

最後の再保険会社、ロイズ

その「最後の再保険会社」がロイズです。
・・・ロイズ自体は「保険組合」という組織形態になっていて、保険の引き受け自体はロイズの会員であり「無限責任(無制限の責任)を負っているアンダーライター(保険請負人)」ということになっています。

世界の金融の中心という雰囲気

ロイズはロンドンの金融街、シティにあります。
地下鉄のBank駅から徒歩5分ほどの所にあります。駅の周辺には王立取引所(「王立」というところが英国らしい)やイングランド銀行があり、まさにイギリスの(世界の)金融の中心という雰囲気がします。

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入口は厳しいセキュリティ

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さてロイズビル入り口まで来ました。受付のセキュリティは厳しく、パスポートを提示しての身分確認~警備員のセキュリティチェック(空港と同じ)を経て、やっと中に入ることができました。

注)
今回は、SOMPO CANOPIUS の小津さんにアテンドいただき内部に入ることができましたが、普段はなかなか入れないと思います。

グランドフロア

最初にご案内いただいたのはグランドフロア。広いホールのようなフロアーはアンダーライティン グ・ルームです。ここでは昔ながらにアンダーライターが保険会社(再保険会社?)の担当者と顔を見合わせながら(実際はパソコンに向かいながら)打合せをしています。

昔(40年前、保険会社の新入社員の頃の)テキストで見たような、まさにそのままの光景でした。そして、そこで働いている皆さんはビシッとしたダークスーツにネクタイ着用。一年中このドレスコードが適用されているようでした。(日本のようなクールビズは無いみたいです。)

※建物内部。階段やエレベーター、各配管類は建物外部に配置されているので室内はシンプルです。

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※室内に掲げられている絵画。
アンダーライティング・ルームの様子は今とほぼ同じ。パソコンは見当たりませんが。。。

ホール中央の鐘

ホールの中央には「LutineBell(ルーティンベル)」という鐘があります。
この鐘は1799年に沈没したイギリスのフリゲート艦ルーティン号から引き揚げられたベルとのことでした。

悪いニュースがあると(大口の事故の発生とか)、鐘が1つ鳴り、良いニュース(イギリスの王室の 慶事とか)では鐘が2つ鳴らされるようです。

・・・タイタニック号の沈没時には鐘が1つ鳴らされました。
鐘が鳴るのは本当に稀のことで、その時は建物内に鳴り響く鐘の音が1つなのか2つなのか、皆さんシーンとして聞いているようです。

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※館内には歴史的資料が展示されています。

健全な経営を続けてほしいロイズ

ロイズはこれまで様々な巨大なリスクの再保険を引き受けてきましたが、収支は厳しいようです。 特に環境汚染等の賠償責任の大口の保険金支払いが影響しているようです。
無限責任という仕組みに難色を示している引受人もいて、これからは有限責任の方向となっていくのかもしれません。

いずれにしても世界中の保険会社(保険代理店も)が保険の引受けを続けていくためにはロイズが健全な経営を続け、シティに君臨していってほしいと思います。

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※ビルの地下には床屋があります。


今回のロイズビルの見学にご協力いただきました損害保険ジャパン日本興亜(SJNK)及び SOMPO CANOPIUS の小津さんに感謝申し上げます。


2017(平成29)年5月 
<藤田 徹>